第9章 九夜
「ッ………ハァ、ハァ…………」
震える指先が、青いチャクラを纏う。
ズズ…と細く糸が伸ばされるが、チャクラはたちまち弾けた。
「ハッ………この俺が、傀儡勝負で負けるなんてな…」
小南は紙分身を消し、ゆっくりと地に伏すサソリに歩み寄った。
サソリは持ち上がることすらままならない頭を横に向ける。視線の向こうではデイダラが身体中の肉を失い、至る場所から血を流している。
爆発勝負で負けた傷だ。腕を応急処置して戻ってきたものの、小南の起爆札に何度も身体を爆破された。
「死に損なったのが仇になったな。芸術家よ」
「……………ぐッ」
小南が手をかざすと、サソリの手足の上に紙の杭が出来る。そのまま振り下ろせば、まるで標本のようにサソリの手足は地面に縫い付けられた。
「悪趣味なコレクションだな……クク」
「……………」
小南は手を振りおろす。背中の上の杭がサソリの心臓を突き刺そうとしたその時、小南は手を止めた。
「………!」
オレンジの目はどこか遠くを見て固まっている。この感じは忘れることは無い、リーダーの思念波だ。
「…命拾いをしたな」
手足を突き刺していた杭は解けてただの紙に戻る。
小南は踵を返し、サソリを後にした。
「…………デイダラァ」
掠れた声は届くことは無かった。