第9章 九夜
「うっ!」
地面に叩きつけられたが、デイダラさんの鳥がクッションになってくれたようだ。頭にかかった砂埃をふるい落とし、痛む太ももをかばいながら起き上がる。瓦礫の向こう側の更に遠くの方で、白い紙が舞っているのが見えた。瓦礫が壁になっているせいで此方からからは様子を伺うことは出来ない。
「ニナ、さん」
「!サクラさん」
「………いえ、今は鎖羅、ね。」
サクラは鎖羅のドクドクと血が流れる太ももに手をかざして治療する。
「どうして…」
「戦場には敵も味方も関係ない。少しでも傷を負っていれば同じ怪我人よ。」
「…ありがとうございます」
若干痛みは残っているものの、気を使うことなく歩けるようになった。
「聞いてもいいかしら。…どうして木の葉に?」
「…私は暁の最大の目的である尾獣集め……残る九尾を奪取する為に敷かれた今回の作戦に反対して暁を出ていきました。」
「暁って裏切り者は殺すって聞いたわ。でも鎖羅さんは記憶を消されただけ…」
「あの二人が逃がしてくれたんです。」
鎖羅は瓦礫の向こうで戦っている二人を指した。
「前も言いましたが、信じて貰えなくたって構わないんです。ですが、私は少なからずペインの抱く平和の思想に疑問を持って、今ここにいます。だから…」
「もう分かってる、鎖羅さんが私たちを守る為に戦ってくれていること!」
サクラは立ち上がり、拳を打った。
新緑の瞳は鎖羅を真っ直ぐ見つめる。
「木の葉の忍者として、あなた達暁にお願いするわ。今綱手様がナルトとカカシ先生を呼びに行ってる。それまでにペインを倒せるかどうか…やってみてほしい」
鎖羅は決意に満ちた表情を見せ、笑う。
全ては里の平和のため、世界の平和のために。
「任せてください!!」