第9章 九夜
デイダラのスコープが小南を捉える。
羽音を響かせながら羽ばたいた起爆粘土は、パラパラと解けている小南の体にくっついた。
「喝!!」
振り払う間もなく、爆発する。
「まずは一発……」
煙の中を舞う紙を、一枚一枚目で追っていく。その瞬間、デイダラの背筋を“殺気”がゾクリと這い登った。
地上から投げられた紙の槍を左肩に食らう。貫通した槍は一枚一枚分離していくと、デイダラの肩を覆った。
「チィッ…下か」
「旦那ッ、離れてくれ…!」
肩を抑えて膝をつくデイダラに目をやると、覆った紙の数枚には起爆札の印が書かれていた。サソリが地上へ飛び降りると、上空で爆発した。
「紙分身か……」
紙がどんどん集まり、人の形を成した分身は小南に寄り添う。顔に落ちた影の中から橙の瞳が鈍く光った。
サソリはそれを見てニンマリと笑う。
同じように前に立ちはだかるように三代目の傀儡が腕を広げる。
「…………上等だ」
一際強い風が二人の鼻を掠めた。
それを合図に分身と傀儡はぶつかり合う。
紙の盾が傀儡の手刀を受ける。三代目の顎が開かれると、まるで靄のように黒い砂鉄が紙分身を覆った。
「!」
「払ったって無駄だ。微細な砂鉄の粒は一枚残さずお前の紙に付着した。」
紙分身の中で砂鉄が付いた紙が蠢いている。
あの傀儡に仕込まれている磁石か何かが術の発動を防いでいるようだ。