第9章 九夜
「ッ!伏せろッ!!」
サソリの叫び声に、鎖羅とデイダラは姿勢を落とした。金属が弾かれる音が無数に響く。サソリは三代目の傀儡を前に出し、雨のように降り注ぐ針の攻撃を跳ね返している。
「あッ…!」
「大丈夫か?!」
デイダラは鎖羅の太ももに深く突き刺さった針を引き抜く。するとたちまち針は解け、一枚の白い紙へと変化する。
「これ……!小南…!」
「ここから先へは行かせない……」
背中に紙で象られた翼を羽ばたかせながら、小南は三人を見下ろした。真下の地上では、ペインがガイやネジ達を吹き飛ばしている。
(時間稼ぎか……どこまでもつか)
三代目の傀儡がカタカタと顎を鳴らす。
「デイダラ、鎖羅、お前らは下へ降りて角都たちと合流しろ」
「……オイ旦那、オイラその指示には嫌な思い出しかないぜ」
「ハッ……一丁前に心配なんかしてんじゃねぇよ。お前は俺が二度も死ぬタマだと思ってんのか?」
向かってきた紙手裏剣を打ち返したサソリの姿に、デイダラは砂の里での出来事を思い返した。
──何時だって危険が迫れば、真っ先にオイラの前に立つのがサソリの旦那だ。
「フン、永遠を語るクセにまた死なれたら無様なもんだな!うん!」
デイダラは乗っている鳥より二回りほど小さいものを出し、鎖羅を乗せた。
「サソリさん!デイダラさん!」
「悪ィな、鎖羅。」
デイダラは印を結ぶ。
鎖羅を乗せた鳥はそれを合図に地上へと急降下していった。
「……何のつもりだ」
「いや?一人の芸術家の死に際を見届けてやらねぇとなって思っただけだよ」
「クク……その減らず口、最後まで叩けるといいがな……!」
二人は肩を並べた。
一瞬と永遠、交わることのなかった信念。
追い求めた先に二人が見つけた答えは、“共生”の道であった。
“永遠があるから一瞬の儚さを感じることが出来る。”
“一瞬があるから永遠の美しさを感じることが出来る。”
相反する二つの存在は、いつしか片方がいないと己すらも在る事が出来ないと気づく。だから、共に生きる──それだけでいい。認め合う必要なんかない。
二人は、芸術家だから。