第9章 九夜
「全く、お前はもう少し賢い戦い方が出来ないのか」
「しょうがねぇだろぉがよォー!オレの呪術はオレが傷ついてナンボなんだからよ…」
「ヒッ!!」
甲高い悲鳴に角都が振り向けば、青ざめた顔をしている鎖羅が立っていた。
「あれ?鎖羅は見たこと無かったっけか?うん?」
「い、いや、あります、ありますけど、あの時は腕でしたし……」
「ゲハハハ!デイダラちゃんが無様に忘れモンしてきた時か!」
「動くな馬鹿者!」
角都はぐらぐらと揺れる飛段の頭を一発叩き、己の身体から蠢く触手でひと針ひと針縫い付けていく。切断されていた身体のパーツが元通りになると、飛段は立ち上がり首を鳴らしながら鎌を手にした。
「んで?六道は倒したけど次はどうすんだ?」
「木の葉の忍達がペインと戦闘中だ。俺たちはその援護に向かう。」
サソリはデイダラの出した鳥に飛び乗る。
「ハァ?!オイ!てめぇらだけかよ!」
「徒歩には慣れてんだろ!オイラ達は先に行く!」
チャクラ糸で拾い上げられた鎖羅は徐々にスピードを上げていく鳥にしがみつきながら戦況を把握する。
多くの忍が至る所で傷を負い、倒れていた。
倒壊した家屋からは子供の泣き声が響いている。逃げ惑う人々は、終ぞ身体の負傷に耐えきれずに何かに縋るようにしながら死んでいった。
地獄────この一言に尽きる。
忘れもしない、かつての故郷の最後の姿。
あの時は守ることが出来なかったものを、名は違えど今度こそ守ろうとしている。
脳裏に焼き付いたあの日の夕日を思い出しながら、鎖羅は強く噛み締めた。