第1章 薄暮
かけた幻術が一瞬にして解かれる。
気づいた頃には、身体は空中に持ち上がっていた。
「っうぅ、な、なんで」
床に思い切り叩きつけられる。
衝撃波が屋根にも伝わり、本殿のおよそ半分は勢いよく崩れていった。
瓦礫をかき分けて身体を出す。見上げれば、紙で象られた天使の羽を持つ女性、藤色の目を鈍く光らせる橙色の髪の男性は、赤雲の装束を靡かせて空に浮かんでいた。
その姿、正しく神と天使であった。
圧倒された。
今まで戦ったどんな賊たちよりも美しく、強く、神聖だった。
「平和……と言いましたか」
「そうだ。この世界に痛みを知らしめる……そして復讐の連鎖を止めるのだ。我ら暁は忍界の夜明けを導く。鎖羅、お前のこの痛みは─────」
ペインは背後に広がる燃え尽きた家屋、そして死体に向けて手を広げた。これら全ては鎖羅の全てでもあった。
「平和への礎となる。」
こうして、私は里に別れを告げて暁に加入し、新たな人生を歩んでいくことになった。