• テキストサイズ

邯鄲の夢【NARUTO】

第1章 薄暮



地下室へ入り、母の隣に父を寝かせる。
望まぬ形での、最後の一家団欒。
別れを惜しむように、二人の間で夜を明かした。




「邯鄲の夢、第百十四篇」

「ペイン、彼女は恐らく本殿よ」

里の離れに立っていた蔵書室に並べてある100あまりの歴史書の中で1番新しいものの数は百十四。百十二篇と百十三篇は抜けていた。

2年半前、ある里が一夜にして消滅した。
里を統べていた一族の次期当主が生き残りであり、一族惨殺の犯人でもある。
それ以来黒く焦げた里に居座り、根城にしようとする賊や、禁術の噂を聞き付けた者達を返り討ちにしているようだ。

「……行くか。」

本殿への道を歩く。
至る所に焦げた死体が転がっている。未だ時間は2年前で止まったままのようだ。
朽ちかけた木造の本殿に入ると、ぶわりと白檀の高貴な匂いに包まれる。
大きな神像の前に、1人の少女が座っていた。

「夢のように消え去った一族の唯一の生き残り、鎖羅だな。」

ゆっくりと振り向いた少女は、デイダラよりもいくつか若い雰囲気で穏やかに微笑む。

「……賊ですか?」

「私達は貴女を勧誘しに来た。敵意はない。」

「俺たちは暁だ。平和の為に、世界征服の為に活動している。これを実現するために相応しい実力を持つ者を誘い入れている。……暁はお前を歓迎する。」

少女は立ち上がり、クナイを引き抜く。

「禁術を狙う賊であるなら、誰であろうと退けるのみです」

木造の床が軽やかな音を立てて揺れる。
向かってきた鎖羅に手をかざし、衝撃波を放つと勢いよく後ろへ吹き飛んでいった。

覆い被さる瓦礫の山から一筋の水の筋が放射状に広がる。小南と共に避けながら本殿内を駆け回る。

「邯鄲の夢……“与”」

急激な眠気に膝を折ると、当たりはいつしか水の中に変わっていた。

(これが邯鄲の夢……既に全て開花させていたか……だが)


/ 389ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp