第9章 九夜
「!!」
デイダラの身体は徐々に色を失い、真っ白な等身大の粘土と化す。閻魔の像は消え失せ、男は突然の自体に受け身を取る事も出来ず、大規模な粘土分身の爆発に巻き込まれた。
上空からデイダラはその様子を見下ろす。
狭まった瞳孔はまるで猫の目のように広がった。
「オイラに幻術を仕掛けたのが間違いだったな!弱さなんざァとうの昔に乗り越えてんだよ!うん!!」
男の身体は腐った臓物を撒き散らしながら爆裂した。赤雲の外套は燃え、至る所に飛び散った四肢が消えることのない狼煙を燻らせていた。
サソリは僅かに残っている肉体から血を滴らせ、足元の傀儡を蹴り飛ばした。無惨に砕け散った、六道“だった”もの。期待させるような作りの割にはさほど手応えが無かったようで、サソリはつまらなさそうに三代目を翻した。
「こんなものか、所詮素人が作る傀儡など…」
「随分と退屈そうじゃねぇか旦那」
「当たり前だろ。死んでから改造したなり損ないなんて、芸術のひとつですら無ェよ」
二人が見つめる先では、鎖羅が長髪の六道と戦いを繰り広げている。
「あァッ…!!」
男の回し蹴りが鎖羅の鳩尾に直撃し、急激な内容物の上昇に耐えられずに瓦礫の割れ目へ吐き出した。
「ゥッ…!」
だらだらと口からヨダレと吐瀉物が垂れる。
ギロリと男を睨みつけ、顔を真上に上げて噴水のように水を吹き出す。落ちてきた水を浴びた鎖羅は、口を拭って立ち上がった。
そして、左から聞こえた羽音に振り返った。