第9章 九夜
蒸発熱を浴びそうになった鎖羅の身体は黒い触手に巻かれて持ち上げられる。そのまま巻取られれば、角都の懐へ受け止められた。
「よく聞け。今里の至る所に現れた六道たちは各々固有の能力を持っている。それも輪廻眼の力を元にした強力なものだ。」
「か、角都さんまで…!どうしてここに?!」
「話を聞けと言っているだろう。全員をまとめて相手していてはラチがあかん。各個撃破を心がけろ。」
「……今、付近にいるのはあの身体の大きい男と、さっき来たばかりの女の子だけですか?」
「ここにはな。リーダーは恐らく俺達の対処を優先する。次第に集まってくるぞ。」
「角都いつまで話してんだよォ!オレの獲物はどっちだァーー?!」
角都は舌打ちをし、後方から走ってきた飛段に顔を向ける。
「今作戦を立てている!大人しく待っていろ!」
「作戦ンーー!?そんなン全員ぶっ殺せばいい話だろうがァー!!」
「…話にならん。鎖羅、二時の方向でサソリとデイダラが二匹相手に交戦中だ。お前はそっちへ行け。ここは俺達に殺らせてもらう。」
「分かりました!角都さん、飛段さん、死なないでくださいね!」
「…フッ」
「それをオレに言うかよォ!」
鎖羅は角都達に背を向けて走り出す。
「……飛段、分かっているな。」
「当たり前だろ!オレはあのデブだな?!」
女のペインが地面へ手をつく。一気に広がっていった口寄せの印から頭が三つに分かれて黒い棒を差し込まれた犬が顎を開いて現れた。
「地獄の番犬に会うにはまだ早すぎる……」
角都の背中の仮面はボコボコと隆起して四方へ飛び出した。
「死ぬなよ角都ゥーー!!」
「フン。戯けもいい加減にすることだな!」