第9章 九夜
「まったく、手のかかる小娘だ」
「………え?」
死に際の幻覚だと思っていた赤い髪は、今まさに鎖羅の頭上で風に吹かれている。ずぶ濡れになった身体はいつかの任務を思い出させた。
「おい。分からないはず無いだろ?術は解かれてるはずだぜ」
「サ、サソリさん!!デイダラさんまで!!」
ひゅう、と鳥の翼が風を切る。サソリの横へ着地すると、懐かしく思える金髪が風に煽られた。
二人の姿は以前と変わらず、だが一つだけ違っている。二人ともその身に赤雲を纏わせていない。
「外套……が」
「オイラ達にしちゃあ珍しく意見が一緒だったんだよ、うん。今見据えるべき敵は九尾のガキじゃねえ。アイツらだ」
デイダラが視線を投げた先には、言葉通り好き放題暴れる橙色の髪達。様々な年代と性別の5人は、ペインと似通った髪色と目を携えて里を襲ってきたようだ。
「私が行きます!二人は他の六道へ!」
鎖羅は地を蹴り、大きく飛び上がって一際大柄な体格の男に武器を向けた。二発、鋭い水の弾が向かっていく。それに気づいた男は、素早く身を翻すと難なく二発の弾を吸い込んでしまった。
「オイ!そいつは術を吸収する!ムカつくことにオイラの芸術も不発にしやがるぜ!」
「分かりました!」
鎖羅は空中に武器を放り投げ、デイダラは滑空してそれを拾い上げる。一目散に男の懐へ走り抜け、左腕にチャクラを出来る限り集めた。