第1章 薄暮
「な、なぜだ!次期当主はチャクラの性質がないはず……!」
「…?その、情報、どこで」
「おや?まだこんな所で生きてたんですか」
聞き覚えのある声に振り返ると、スメラギが何人もの敵を連れて立っていた。
出で立ちは変わることなく、しかしただひとつ、父を担いでいた。
「お、おとうさん」
「先程お亡くなりになられましたよ。いやいや……残念ですね、禁術の在り処さえ教えて頂ければ、娘の命だけで済んだものを。」
「お、お前、お前が……お前が!!」
「行け。」
地面に突き刺さった忍刀を抜いて敵陣へ突っ込む。自分より二回り近く大きい敵も、以前の私なら倒すことは出来なかった。
でも今は、母の知識と共に怒りがある。許せない、大切な人を奪ったこいつが、戦いが、戦争が、許せない。
周りには何人もの屍が折り重なって倒れている。チャクラの扱いが苦手な故に、膨大な母のチャクラはまだ活かしきれず、手は震え始めていた。
「……いやいやいや、正直見誤ってました。あなたがそこまでの力を持っていたとは……、だが、これはどうだァ?!」
全てを焼き払ってしまうほどの炎が迫ってくる。刀を投げ捨て、後ろに飛んで逃げるが火の手の方が早い。
「ハハハ!!あなたの欠点が命取りとなりましたね!!!ここであなたは死ぬ!!!そして禁術は私の手、に………?
…………どこだ?」
「禁術は、渡さない。」
スメラギの首をクナイで掻っ切る。
噴水のように赤い血が吹き出した。
「ど、っ、どうして」
あの時、咄嗟に印を組んでいた。
母が長い年月を費やして大成させた“霧化の術”
身体は一瞬にして霧の姿となり、水のある所ならどこへでも現れることが出来る。
「さっきお前のところの部下に火遁を出させておいてよかった。」
「あ、ありえない、そん、な」
スメラギが絶命した。
父の亡骸を抱えて本殿へ向かう。
見下ろす里はいつしか助けを求める声すらも無くなり、ただ火が燃やし尽くしていく音しか響かない。