第1章 薄暮
結界はいくつかの穴が開き、里は戦火に襲われていた。
逃げ惑う民と、地獄の叫び声がさらに怒りの炎を煽る。
父の里を、母の故郷を、絶対に奪わせはしない。
「水遁!水陣柱!」
川のひとつから大きい水柱がたった。
それは川の流れを反乱させ、里に至る所で起こっている火事を消化していく。
辺りに熱い蒸気が漂う。敵はどうやら火遁中心のようだ。
馴染みの市街地も今や戦火に巻かれている。
食物は散乱し、家財や衣服が焼けていた。
「う、ぅ……鎖羅、さま」
「!!早く、こっちへ!」
服に火が燃え移った1人の老婆が倒れた。
水乱波の威力を調節し、ダメージにならないように水をかける。
ここまでできるのは母の膨大なチャクラを糧とすることが出来るからだ。
「あ、ありがとうございます……」
「ここの辺り一体の火は消しておく!!早く隠れて!!」
水乱波で火を消し、老婆を抱きかかえて焦げた店の中に匿う。
すぐさま立ち去り、辛うじて残っている建物の上に飛び乗る。
(ウズメ、ウズメは……)
「うあああ!!」
金属のぶつかり合う音に、下に目をやると3人の賊とウズメが戦っていた。
「ウズメ!!」
「ハッ!鎖羅様!」
「鎖羅…?おい!!こいつだ!!」
「危ない!!!」
加勢しようと飛び降りた矢先、1人の忍が猛々しく向かってくる。
突然の事で対応も出来ず、痛みに耐えるため目をつぶるが、頬に生暖かい液体が飛んでくるだけだった。
「………ウズメ…?」
「ゴフッ……鎖羅様………ご無事で……」
ニコリと微笑んだ後、ウズメはだらりと崩れ落ちた。
「おい待て、そいつは殺すな」
「……許さない」
ウズメの胸から血塗れのクナイを引き抜く。
「なんで!!!なんで殺されなきゃならない!!!」
ウズメを殺した忍目掛けてクナイを突き立てる。
反撃してきた後ろの忍が顔に向かって刀を振り払うが、懐に潜り右腕で当て身をしながら防具の隙間にクナイを差し込む。
「ガハッ!!」
「火遁、火焔砲!」
「水遁、水乱波!」
火と水がぶつかり合い、熱い水蒸気が発生する。敵の火種を潰すと、水濡れになって腰を抜かしていた。
(お母さんの力が、知識が……チャクラを通して伝わってくる……)