第8章 八夜
「ん〜っ!おいしい!」
「…………」
「あれっ、ニナさん、甘いもの嫌いだった?」
「………これ、食べたらなんだか舌がとっても幸せな感じになります…!」
散歩帰りに甘味処へ寄り、ニナさんは寒天を一口頬張ると、器を手にして固まりながらそう言った。その後延々と口へ運び続けるのを見て、私も初めて食べた気持ちを思い出す。
「ふふ!それはね、おいしいって言うのよ」
「おい、しい……」
黒蜜とシロップが混ざりあった汁を飲み干し、器を置く。
「きっと病院食、味薄くってつまらないでしょ?」
「……サクラさん、ありがとうございます」
「…………いいのよ、また明日も来るから、一緒に遊びましょう?」
唇を尖らせて笑うニナの瞳から涙が零れた。
「えっ、ニ、ニナさん?!大丈夫…?!」
「だ、っ、大丈夫ですっ……な、なんか、なんでか分からないけど、っ」
拭ったって拭ったって溢れ続ける。そしてニナは椅子から崩れ落ちた。
「!!!ニナさんっ!!」