第8章 八夜
知らない天井、知らない匂い、知らない布団。
はたと目を覚ませば、白が基調の部屋が目に入る。1人寝かされ、胸には複数の管が取り付けられていた。身体を起こして辺りを見渡す。
「……ッう」
ガンガンと頭が痛む。何故ここに自分がいるのか、この痛みは何からくるのか。ひとつも思い出せない。
「あ、起きたね。」
声の方を向けば、緑のベストを身につけ顔の大半が隠されている男性がベッド横にこしかけた。
「いや〜ビックリしたよ。森の影から足だけ見えてるもんだからてっきり死んでるかと。あ、名前教えてもらえる?」
サイドテーブルのメモ帳をちぎって彼はペンを取り出した。その動作をただ不思議そうに目で追う少女。数秒の沈黙が流れる。
「えっと、もしかして分からなかったりする?」
少女はコクンと頷いた。
「そっか……参ったなぁ」
ふさふさとした白銀の髪が揺れる。しばし考え込んだ後、開き直ったように少女に視線を投げた。
「ま、思い出すまでの間だけだし、とりあえずニナって呼ばせてもらうね。今日は二七日だから」
「あの……ここはどこですか?」
「木の葉病院。」
「木の葉………」
初めて口にしたかのように少女は繰り返し呟いた。そしてはたけカカシと名乗る彼は、少女にいくつか質問しはじめる。