第7章 七夜
気絶している鎖羅の腕を持ち上げて後頭部で十字に組ませる。膝を肩甲骨の間に宛てがい、肘を手前に引っ張りながら膝を入れると、ビクンと身体が揺れて覚醒した。
「ッ、ぅう」
「はぁ……全く、オイラより血の気が多い女だぜ」
「さっきの、デイダラさん……!」
「あのままだったら俺達まで巻き添え食らってたからな。デイダラにしちゃ良い判断だ」
サソリは鎖羅のリュックを足元に放り投げた。慌てて背負った鎖羅は、険しい顔つきで二人を睨む。
「殺すんですよね、私を……」
「あぁー……まぁ本来はそうだけどな。」
予想外の答えに、鎖羅はホルスターにかけた手を下ろす。
「色々俺達も思うところがない、って訳じゃないんだぜ?さっきのお前の演説は見物だったなァ」
「ッ?!ぁああッ!!」
脳を無数の針で突き刺されるような激しい痛みが頭を襲う。自分がぐにゃぐにゃと揺れる感覚に襲われ、地面にうずくまった。
「ぁ、あ……?わたし、わ、たし、なにして、………だ、誰?……だれ?そこにいる、の………」
ボロボロと両目から涙を流しながら、鎖羅はまた気を失った。デイダラは鳥の粘土を練り、巨大化した背中に鎖羅とサソリを乗せる。その鳥は三人を連れて火の国方面へと向かっていく。
阿吽の門が見えてくる。二人は気づかれない距離に降り立ち、鎖羅を地面に寝かせた。そして髪を一束切る。
「なあ、これで大丈夫かな?旦那」
「さあどうだろうな。流石のリーダーも部下の生首を見る趣味は無ェと信じたいぜ。」
砂埃が舞い上がる。二人は夜空へと消えていった。