第27章 〜番外編その4〜
沢山並ぶ、ベビーコットのひとつに
加えられた、家康と桜奈の赤ちゃん。
ガラスの窓越しに、三人で眺めていた。
みな同じように見えても
それぞれ違う赤ちゃん達。
大きい子から、小さい子。
髪の毛が薄い子や、フッサフサな子。
ギャン泣きしてる子もいれば
我関せずと、スヤスヤ眠る子。
生まれて間もない、真っ新な赤ちゃん達にも
既にその身に宿した『個性』の種の片鱗は
見え隠れする。
どんな未来が待っているのか
どんな可能性を秘めているのか
どんな成長を遂げていくのか
産み落とされた、小さな命は
無限の可能性の塊そのもの。
花のように、早咲きの子も
遅咲きの子もいるだろう。
でも、一つとして、同じ花を咲かせない
一人一人が持つ『個性の花』
見つめているだけで、ワクワクしてしまう。
手をかけ、愛情を注ぎ、育てた先に
咲くであろう、その子だけの、その子にしか
咲かせられない『生き方』と言う花。
何時間見つめていても、飽きないと
思うほど、三人は顔を綻ばせながら
愛おしい我が子と愛おしい孫を
眺め続けていた。
すると、一人のナースがパタパタと
誰かを探すように、キョロキョロしながら
向かってきたが、家康を見つけると
『徳永先生!まだこちらにいらしたんですね。
あの、奥様のところに直ぐお戻り下さい!』
ただごとではない、雰囲気に
それまでの緩んだ表情が一気に緊張の
色へと変わっていく。
『ご家族様も一緒に!』と
そのナースの後に続く、家康達。
(な、何が起こった。桜奈!!)
桜奈の身にただならぬ事が
起こっているのだと、直感する家康。
不安と緊張で、鼓動がかつて無い速さで
脈打つ。
それは、鷹介も千里も一緒だった。