第27章 〜番外編その4〜
新生児室に移動するのと一緒に家康も
分娩室を退出することになった。
残りの処置と経過観察の為に
桜奈だけは、まだ分娩室に
いなければならなかった。
家康が部屋を出る間際
『じゃ、お義父さんと、お義母さんにも
会わせてくるね。また、後でね』
優しい笑みを浮かべ、桜奈の頭を
撫でる家康。
疲労の色はあるが
大仕事を終えた清々しい表情で
『はい。家康さんも休んで下さいね』と
にっこり微笑む桜奈。
廊下では、鷹介と千里が今か、今かと
待ちわびていたが、家康が付き添うようにして
連れてこられた孫に、ぱぁっと
表情が輝いた。
新生児用のベビーコットに寝かされて
くにゃくにゃと身体を動かし
時折、小さな口をパクパクさせる
孫の姿に釘付けになる。
小さくて、頼りな気で
触れることさえ、躊躇してしまい
そうになるが、鷹介も千里も
言葉には表せないほどの
喜びに満たされた。
目の前の存在が、ただただ可愛くて
愛おしいと言う感覚だけが
二人を包んでいた。
『可愛い、家康君にそっくりね!』と
家康の顔と見比べながら、にっこりと
笑う千里は
『おめでとう!これからも
この子と桜奈を宜しくお願い
しますね』と頭を下げる千里に
『ありがとうございます。
こちらこそ、お世話になりっぱなしで
これからも、甘えさせて頂くことも
あると思いますが、宜しくお願いします』
と、深々と頭を下げる家康。
『ははは、水くさいこと言わないで
どんと、頼ってよ。
僕達もこの子に関われるのは
何より嬉しいよ。成長が楽しみだよ。
おめでとう、家康君。これからも
宜しくね』と、頭を下げる家康の
肩をポンポンと叩く鷹介。
家康は、鷹介と千里を義理とは言え
実の両親と変わらぬくらい
思慕と尊敬の念を抱き
家族になれたことを、嬉しく思っていた。
また、こうして優しい労りの
言葉と態度で受け入れてくれる
二人に感謝で胸がいっぱいになった。
競うように
『おじいちゃんだよー
おばあちゃんですよー』と
孫に自己紹介しながら初対面を終えると
ナースが『では、新生児室に
ご案内しますね。こちらです』と促され
三人はナースの後に続き新生児室に
向かうことになった。