第27章 〜番外編その4〜
詩織は、心配しないでと
言うように、桜奈肩をぽんと
手を置くと
『でもね、痛かったって印象だけで
どんな痛みだったかは、忘れちゃうの
不思議よねー。だから、また子供が
欲しいって思うみたいよ。
それに普通分娩だと、赤ちゃんも狭い
産道を苦しい思いをして通ってくるのに
身体の体勢を必死にかえて、通り易く
なるように、工夫するんだって。
お母さんの負担を少なくする為に
そうやって産まれて来るらしいよ。
産まれる前から、既に親孝行なんだよ
赤ちゃんは。
陣痛は、赤ちゃんが出てくるのを
後押ししてあげる為の痛みだもん。
お母さんは、赤ちゃんの為に
赤ちゃんは、お母さんの為って思うから
きっと、痛くても頑張れる
苦しくても頑張れるんだなぁって
信長さんに、出産の過程を教えて
もらって、そう感じたよ。』
『へぇー、すごいね』と感心する桜奈。
(そっか、君もきっとお母さんを助けて
くれようとしながら、産まれてきて
くれるんだ・・・)
『私も、次は普通分娩で産んでみたい。』
『えっ、しぃちゃん、また赤ちゃん欲しいの?』
と、双子のお世話だけでも大変そうなのにと
思う桜奈だったが
『うん、欲しいよ。だって信長さんとの
子供だもん。欲しいよ・・・』と
信長に視線を向ける詩織。
(しぃちゃん、お義兄さんを
愛してるんだなぁー、家族をいっぱい
作ってあげたいって思ってるのかな・・・)
両親をわずか3歳で亡くした信長。
徳永の育ての両親も、もちろん大事な
親には違いない。
複雑な事情はあれど、信長は確かに
愛されて育った。
だがそれとは別に信長の中にある
育ての親に対する無意識の遠慮を詩織は
感じとっていたのかも知れない。
詩織がどんな風に思っているかは
分からなかったが、桜奈は
そんな思いを巡らせた。