第26章 〜番外編その3〜
『そうだ、雪のように冷たく無表情でも
春のように穏やかに微笑む桜奈でも
貴様は、桜奈に惚れたはずだ。
何度生まれ変わろうと、容姿が違えど
惹かれる・・・縁の力は、人間の
到底及ばぬ働きの中にある力。
それに抗う力も謀る力も人間にはない。
しかし、先に逝った者は今生には
もう戻っては来ぬ。
残された者は、後を追いかけるように
命尽きるその日まで、生きねばならぬ。
ならば、今の生を生き切るしかなかろう?
縁の力によって、来世でまた巡り合う者達に
胸を張れる己で在るために
今は、己の為すべきことを為すまでのこと。
この世に、もとより是非などない。
在るのは、己が信念のみ・・
己が己で在る為の信念に従い生き切るのみよ』
と言うと月を見上げながら、クイっと
杯を空にした。
そして、スッと立ち上がると広間へと
戻って行く信長。
見送る家康の胸に再び燃え上がる一つの想い。
(胸を張ってか・・俺には、桜奈との
果たすべき約束がある。
約束破ったら、会ってくれなそうだしな)
桜奈の性格を思い出しクスッとする
家康だったが、空を見上げ桜奈に
語りかける
(来世で、待っててよ桜奈・・・
必ず、会いにいくから!)
それから、暫くして宴に戻った家康。
栞に写真を返した
『やっぱり、あんたの言った通り。
あんたの妹は、来世の桜奈だと思う。』
気恥ずかしそうに、少し悔しそうに話す家康。
『うん・・・ごめんね、私だけ先に
会ってきちゃって。でもね、桜奈は
あんたを片時も忘れてないんだと思ったよ。
物心ついた時から歴史上の徳川家康
つまりは、あんたの事が大好きだって
言ってたよ。理由は、分からないけど
とにかく気づいたら好きにになってたって・・
うちの母曰く、桜奈は徳川家康への
愛が止まらないのよ!・・・だそうよ』
とクスクスした。