第26章 〜番外編その3〜
二人の想い合う姿に家康の胸が
キュッと締め付けられる。
寂しさなのからなのか、羨ましさからなのか
それとも、懐かしさからなのか
何とも言えない気分で廊下を歩く中
心の中で桜奈に語りかける。
(夫婦喧嘩は、犬も食わないっても言うけど
栞が戻ってきてくれて、丸く収まりそうで
良かったよね。桜奈・・・)
返事など返ってくるはずもないのだが
家康には
『そうですね。
ほんとに、ようございました』
と、にっこりと微笑む桜奈の姿が
思い浮かぶ。
桜奈が、この世を去ってからも
家康の心の中で、桜奈はずっと
生き続けている。
桜奈なら、きっとそう言うだろう
そう思いながら、また前を向き歩き出す家康
だった。
家康が出て行ったあと
しっかりと、抱きしめ合う信長と栞。
お互いの存在を確かめ合うように
深く口づけを交わすと、またぎゅーっと
抱きしめ合った。
『信長様、私の留守の間、凛桜は
大丈夫でしたか?』
1番気がかりだった娘のことを尋ねた。
『ああ、あいつは誰に似たのか
頑固だが、道理がわかれば
聞き分ける聡い子だ。
わし同様、貴様の帰りを信じて
疑ってはおらぬようだったぞ。
それに、貴様がいなくなったあと
破談の理由も伝えたが
わしを信じて待つと言いおった。
まるで、桜奈と重なるようだった』
『そうですか・・・桜奈さんみたいに
成長してくれてるんですね・・良かった・・』
娘の成長を、夫と分かち合える喜びに
栞の目には、また涙が零れ
それを拭いながら
『信長様、勝手をして心配を
かけてしまいましたが、里帰りして良かったです。
向こうで、また桜奈さんに会えました』
突然の告白に、栞を身体から離すと
栞の顔を見つめ
『それは、どう言うことだ?』と
驚いたように尋ねる信長。