第26章 〜番外編その3〜
『俺には、7年も経ったなんて思えない
ですけどね・・・桜奈と過ごした
日々が、まるで昨日のことのようですよ。
明日になったら、ひょっこりと現れて
家康様!勝負ですって囲碁の対局をせがんで
きそうだな、なんて思ったりするし・・・
まぁ、あり得ないんですけどね・・・』
(今でも、会いたくて、会いたくて
仕方ないままだしなぁ・・・)
『貴様の執着も大概だな・・・』と
ふっと笑う信長。
『それ、信長様だけには
言われたくありませんけどね・・・』
と、呆れ顔の家康。
そんなやりとりをしていると
『ん・・ん・・・』とゆっくりと栞が
目を開けた。
栞の視界に飛び込んできたのは
会いたくてたまらなかった、愛しい人の
ホッとした顔だった。
『信長・・様?』と問いかけ栞に
『うむ。大事ないか?』と声をかける信長。
すると栞は、両手で顔を覆い
(帰ってこれたんだ、私・・
ちゃんと帰ってこれた・・・)
感極まり涙が溢れた。
泣きながら
『ごめんなさい。勝手をしました。
きっと、お怒りになってますよね?』と
謝ったが
『怒ってなどおらぬ。帰ってくると
信じてたからな・・・だが、二度とこんな真似は
するな。肝が冷えて、生きた心地がせぬ。』
そう言うと、栞の手を握り自分の額に
押し当てた。
『ごめんなさい・・・』とポロポロと
涙を零す栞。
そんな夫婦のやりとりを見ていた家康は
『じゃ、落ち着いたら、また診察しますから
呼んで下さい。一旦、秀吉さん達に
報告してきます』と、声をかけると
部屋をそっと出て行った。