第26章 〜番外編その3〜
閃光の眩しさから解放された
秀吉達は、信長の腕の中の栞を確認し
歓喜と共に、心の底から安堵した。
この3ヶ月間の信長の不機嫌さと言ったら
常にプリザードのような冷気を纏い
家臣一同、生きた心地がしない日々を
送っていたからだ。
『やっと、帰ってきてくれたぁ・・』
はっーと、一気に気が抜け崩れそうになる
自分の身体を膝に手を当て支える秀吉。
『全くだ。』と秀吉の肩をぽんぽんと
叩き、気苦労を労う光秀。
光秀をみて、苦笑いする秀吉は
気を取り直し
『信長様!お急ぎ、宿に戻りましょう。
栞が、風邪をひいてしまいます』と
声をかけた。
ひとまず温泉宿に戻ると、栞の濡れた衣服を
着替えてさせ、布団に寝かせ
栞が起きるのを静かに待った。
栞の荷物を運びつつ、診察の為に
部屋に入ってきた家康。
(にしても、夜逃げでもしてきたみたいな
荷物の量だな・・・)
ずっしりと重たい、荷物を置くと
気を失っている栞を診察した。
が、特に異常はなさそうだった。
『信長様、大丈夫です。どこも異常は
ないです。俺が看てますから、今のうち
信長様も湯あみしてきて下さい。』
ずぶ濡れのまま、栞から片時も離れようと
しない信長にそう促した。
『そうか。大事ないか。
ならば、少し席を立つが何かあれば
すぐに知らせよ。』
そう言って信長が退出すると
家康は眠る栞に向かって
『全く、人騒がせなやつ。
お陰で、胃痛の薬をどんだけ作らされたと
思ってんだよ。あんたのせいで
こっちは、仕事増えて、大変だったんだからな。
夫婦喧嘩できる相手がいるだけ
感謝しなよね・・・俺には、その相手すら
もういないってのに・・・』
ブチブチと、文句を言う家康。
桜奈が存命なら、きっと栞を
止められただろうと思う家康。
だが、言葉とは裏腹に栞が戻ってきて
くれて嬉しくて仕方なかった。
栞とは桜奈を取り合うほど間柄。
男女関係なく人としての桜奈を
慕っていたのは、お互いに理解しあっていた。
家康にとって、栞は桜奈との
思い出を誰より多く共有し、分ち合える
同志のような存在だったからだ。