第26章 〜番外編その3〜
ーーー時は、戦国時代ーーー
栞が、現世でワームホールに飲み込まれる少し前
佐助からの情報を得て、信長は本能寺が
焼け落ちた場所に立っていた。
歴史上では、あの本能寺の変で
信長は自刃したことになっているが
その後、信長の遺体は見つからないまま
なのだと栞は言っていた。
本能寺の変の真っ只中で栞が信長を
助けたのだから、遺体など見つからないのは
当然と言えば当然だが
信長は、本能寺の変を境に表舞台からは
姿を消し、歴史に影響しないよう努めていた。
そして、栞が現代に戻るのを止められなかった
3ヶ月前のあの日から
(もしも、栞が帰ってくるなら
初めて出会った、あの場所であろう。)
そう思っていた。
信長が直感した通り、佐助からは
ワームホールが開く場所がこの場所で
確定したと連絡を受けたのが半月前。
やっとと言う想いを胸に
雷鳴が轟き、雨足が強くなる中
1人佇み、栞の帰還を今か今かと
待ち詫びていたのだ。
ピカッ ゴロゴロゴロ・・・
少し離れた場所では、雷の音に驚き
馬達が動揺し足踏みする中
どうどうと、声をかけ落ち着かせながら
秀吉達は固唾を飲んで見守る。
佐助が『信長様、定刻となりました』と
告げると、信長はコクッと頷き、空を見上げて
目を閉じた。
次の瞬間、ピカッ!と閃光が当たりを包み
すぐに、ドォォーンと言う音の地響きの振動が
身体にまで伝わってきた。
地響きを感じた瞬間に目を開ける信長
白く霞んだ中、ワームホールが開くのが
ぼんやりと見え、その中から
吐き出されるように栞がふわりと
落ちてきた。
栞は、信長の腕の中へ。
抱えてきた荷物は、栞か外れたが
信長が栞を抱えたまま、キャッチした。
気を失っている栞を
ぎゅっと抱きしめると頬をすり寄せ
『待ち詫びたぞ、栞。
馬鹿者め!心配させおって。
だが必ず戻ると信じておったぞ』
愛しい妻を自分の腕の中に捕まえたことを
実感し、安堵する気持ちと喜びで
胸がいっぱいになった。