第1章 〜幸せだった?〜
少しだけ眠り、目が覚めた桜奈は
家康の胸に抱かれていた。
『家康様・・・』そう言って
家康の胸に縋り、声にならないまま
流れる涙とともに嗚咽を漏らした桜奈を
家康はまた、ぎゅっと抱きしめ
『桜奈、今日は信康と一緒に
寝ようか』と言うと
その日の夜は、川の字になり真ん中に信康を
挟んで我が子の亡き骸をいっぱい撫でた。
まるで遊び疲れて眠っているだけの
我が子に語りかけるように。
明日の朝には、目を覚まし
父上、母上と言って笑いかけて
くれそうな、我が子に二人で
夜通し語りかけ思い出を語り合った。
涙に震えながら桜奈は
『信康、母は、来世でも父上のお嫁さんに
してもらう約束をしています。
そしたら、また父上と母の子として生まれて
きてくれますか?
今度こそ、絶対に信康を幸せにします。
約束します。だから、だから
また母の子に産まれてきてくれますか?』
そう言って涙を流し、冷たくなった
我が子の頬に頬ずりをする桜奈。
『そうだぞ、信康。父は来世でも絶対
母上をお嫁さんにするよ。
だから、また父と母上をかけて勝負だ!
信康が父と母上のところに、こないなら
母上は、父が独り占めするからね。
嫌なら、また俺達のところに生まれてきてよ
待ってるよ、信康!』そう言って
信康の頭を撫で、涙を流した。