第1章 〜幸せだった?〜
信康の葬儀を滞りなく終え
信康を見送った家康と桜奈。
信康の死を受け、桜奈の身体は
想像以上に弱っていった。
こんな身体では、もう子供を授かることは
無理なことは桜奈自身が一番よく
分かっていた。
桜奈は、ある決心をしていた。
どうしても、徳川家の嫁として譲れない想い。
例え、家康を傷つけることになった
としても、命に代えてもその責務を
果たす覚悟をしていたのだった。
信康の死から数ヶ月
二人は、慰め合い寄り添い合い
悲しみから必死に立ち直ろうと
していたが、ある日の夜
桜奈は、家康に
囲碁の勝負を持ちかけた。
碁盤を見ると家康に勝とうと
必死に考える信康の姿が思い出され
見るのが辛かったが
その日の夜は意を決して
家康に頼んだのだ。
無理はしない方がいいと
優しく労ってくれる家康に
これから自分が願い出ようとしている
ことを思うと胸が痛んだ、囲碁の勝負は
その願いごとの口実でしかなかった。