第26章 〜番外編その3〜
家康の言葉にコクッと頷くと
自分から桜奈を離した。
『お姉ちゃん、ありがとう!
お姉ちゃんが私のお姉ちゃんで
嬉しかった!元気でね』
ポロポロと涙を零しながら
そう言うのが精一杯の桜奈。
両手で頬を包み、桜奈の涙を拭うと
コツンとおでこをくっつけて
『うん、桜奈も元気で!』
祈りを込めるように栞はそう言った。
ピカッ ゴロゴロゴロ・・・ピカッ・・・
桜奈を家康に預けると
『パパ、そろそろだよね?
皆んな、巻き込まれたら大変だから
私から、離れててね』
ザーッと言う、雨の音で栞の言葉は
聞き取り難かったが、鷹介に
どんな状態でワームホールが
開くかは、事前に話しをしてあった。
鷹介は、栞から離れるように
促し、栞を固唾をのんで見守る。
腕時計で時刻を確認する鷹介は
予定時刻になったことを
栞に目で伝え、頷く。
栞も、鷹介からのアイコンタクトで
その時がきたことを知ると
『皆んな!ありがとう!
元気でね!さようなら』と
涙を浮かべながらも
満面の笑みを見せ、手を振った。
次の瞬間、ピカッと強い閃光が当たりを
包むと、ドォォーーーンと
地響きと共に、雷が落ちた。
眩しさに、目を瞑った桜奈が
目を開けた時は、栞がさしていた
傘だけが、パサッと裏返しに落ちていて
雨が容赦なく打ち付け
雨水が少し溜まっていた。
『お姉ちゃん、行っちゃった・・・』
呆然とする桜奈の肩を抱き寄せ
『うん。行っちゃったね。寂しいけど
でも、栞さん、笑ってたよ。
向こうの家族が待ってるしね・・・』
(そうだ、信長さんや、凛桜ちゃんが
お姉ちゃんを待ってる・・
お姉ちゃんは、お姉ちゃんの幸せになる
場所に帰っていったんだよ)
家康の言葉で、桜奈の寂しさは
少し軽くなるような気がした。