第26章 〜番外編その3〜
朝になり、朝食を済ませて
荷物を整理し、チェックアウトを済ませた
上杉家と家康。
桜奈は、家康にもらった
プレゼントを身につけて
ご機嫌だった。
ホテルを出た時は、快晴だった空は
ワームホールの開く時間が近づくと共に
雲行きが怪しくなってきた。
ピカッ ゴロゴロゴロ・・・
雷鳴が轟き始め
雨がポツポツと降り始めた頃には
本能寺跡地の前に皆で立っていた。
『栞、元気でね。どうか、無事に戻れ
ますように』千里が栞を抱きしめ
そう言った。
『無理は、するなよ』抱きしめられる
栞の頭をぽんぽんと撫でながら
鷹介も切ない表情をうかべ微笑む。
『パパ、ママ、ありがとう。
私ね、パパとママの子供に生まれてきて
本当に幸せだったよ。これからもっと
幸せに生きて行くから、心配しないで
パパもママも元気で、身体大事にしてね!』
うん、うんと頷くだけで精一杯だった。
千里の背中をさする栞。
鷹介は、そっと栞から千里を離し
肩を抱く。
既に涙を目にいっぱい浮かべる桜奈を
両手を広げ、抱きしめると
『桜奈、会えて本当に嬉しかった。
元気でね。家康君と幸せになんなさいよ。
今度こそ。パパとママは頼んだよ』
(絶対だよ!)
『お姉ちゃん・・・うぅ・・』
いつの間にか、雨は強くなり始め
抱きしめ会う二人に、そっと傘をさしかける
家康。
栞は家康を見つめると
『家康君にも、出会えて良かった。
桜奈を宜しくね。
家康君とでないと、桜奈は
きっと、幸せになれないから!
今度は絶対桜奈を手放さないでね』と
家康にそう告げた。
(必ず)と声には出さなかったが
真剣な表情でコクッと深く頷く家康。
それから
『お世話になりました。栞さんもお元気で』
と返した。