第26章 〜番外編その3〜
『あっ!そうだ。ねぇ、桜奈
写真選び手伝ってよ』とベッドの上に
写真を広げる栞。
本当は、全部持っていきたいところだが
存在しないものが、ある事で未来に
影響することだけは避けたいと思っていた。
厳選して、ほんの2、3枚を持って行こうと
決めていたのだ。
『あっ、これは?』と桜奈が
指差したのは、皆で写した写真。
清水寺で撮ったものだった。
もちろん、家康も写っている。
『いいね、あと、これは、この中だな』と
紅葉をバックに着物姿の桜奈だけを
写したものを、家康の巾着の中に入れた。
『それ、私しか写ってないよ?いいの?
さっきのプリクラもだけど・・・』
(家康さんと一緒のなら、未来でまた会えるよ
って分かってもらえそうなのに・・・)
『いいの、いいの』
(隣に家康君が写ってたりしたら
間違いなく、不機嫌になるからね)
と苦笑いする栞。
これは、あれは?と写真選びをしていた
桜奈だったが、だんだんと
栞が明日には、居なくなってしまう
現実に、寂しさが募ってくる。
『お姉ちゃん、本当にもう会えないのかなぁ』
しんみりとした顔で、栞に尋ねた。
栞は、少し困ったように、微笑みながら
『うん、たぶんね。だから、桜奈には
申し訳ないけど、パパとママの事を
お願いできるかな?』
そう言って、桜奈の頭を撫でた。
『うん、心配しないで。』と栞をみたが
寂しさで、泣きそうになる自分を隠すように
ベッドに顔を埋め、突っ伏す桜奈。
『ありがとう、頼むね。
戻ってこれて桜奈に会えて
お姉ちゃん本当に嬉しかったよ。
私の妹に、生まれてきてくれてありがとうね』
と桜奈の頭を優しく撫でながら
栞がそう言った時
時刻は、0時丁度をさしていた。
顔を埋めたまま、肩を震わせ涙を零す桜奈。
(お姉ちゃん、私もだよ。
お姉ちゃんが私のお姉ちゃんで良かった。
会えて、本当に嬉しかったよ・・・)
栞のその言葉は、桜奈には
生涯忘れられない、誕生日プレゼントになった。