第26章 〜番外編その3〜
みんなで、姉妹で、家康と二人で
色々なバージョンで撮って
出来上がった写真を見ながら
『美肌すごい!』『もはや別人?』などと
キャッキャッしながら、写真の精度に
驚く栞と桜奈。
最後に栞が、桜奈に小声で
『ねぇ、桜奈。桜奈だけの
写真撮ってくれない?』と囁いた。
キョトンとしながら『ん?なんで?』と
尋ねる桜奈に
『あっちの家康用に、お願い』と
手を合わせた。
何故、自分だけが写ったプリクラが
必要なのかピンとこなかった桜奈だったが
『うん、分かった』ともう一度撮りに行こうと
する桜奈を栞が引き留めた。
『あっ!ちょっと待って
あのつげ櫛、今ある?』と聞かれ
『うん、ここにあるよ。お守りだから』と
帯の隙間から、すっと取り出し栞に見せた。
栞は、つげ櫛を手に取ると
桜奈の髪に飾った。
『じゃ、これで撮ってきて。ちゃんと櫛は
受け取りましたよって、証拠に!
じゃ、宜しく』とニヤッとした。
(ああ、そう言うことか!)と栞の言葉を
額面通りに素直に受けとる桜奈に
栞の思惑がわかるはずもない。
『うん、分かった』とにっこりしながら
撮影に向かう桜奈。
(ほんと、素直だねぇ・・・
例え、家康君が生まれ変わりの
あんただよって言っても
家康のことだもん
他の男と写ってるものじゃ
絶対、納得しないだろうからねぇ・・・
桜奈さんへの執着が病的だったしね)
と遠い目をする栞。
写真そのものが、本来戦国時代には
存在してはならないもの。
こっそり、隠れてバレないように
眺めるだけなら普通の写真でも
不測の事態にはならないかも
知れない。
その為には、人目に晒さないよう
厳重に管理してもわなくては、ならなくなる。
でもプリクラなら、薬入れの内側でも
お守りの中でも、肌身離さず
持ち歩くものに、貼っておけるのではないか?
栞は、そう考えたのだった。
(心の中には、片時も離れずに
いるとは思うけどね・・・
でも、写真ででも一目会いたいって
私は、思うもの・・・)
写真のない時代だからこそ
桜奈の姿を家康に残してやりたいと
思ったのだった。