第26章 〜番外編その3〜
ケーキを取り分けてもらい
本当に幸せそうに、美味しそうに食べる桜奈。
鷹介達も家康も桜奈が喜んで
くれた事が、何より嬉しかった。
明日になれば、栞は帰ってしまう。
最後の家族水入らずの晩餐会が
とても幸せな思い出になったことに
栞も満足していた。
寂しくないと言ったら嘘になってしまう。
けれど、後ろ髪引かれてしまうような
心残りも、もうないと言えるほど
清々しい気持ちでいた。
最愛の人の元へ戻ることを
両親に認めてもらい、背中まで押してくれた。
自分がずっと愛されて、大切に育てて
もらったことを実感できた。
そして、計らずも最愛の親友の未来を
見届ける事もできた。
自分が帰っても、桜奈の存在が
両親を支えてくれるはず。
そんな安心感も感じることができた。
自分の心の奥深くに沈み
意識に上ることはなくても
どこかで、ずっと燻っていた
現代の世界での気がかりが
全て溶けて消えていくようだった。
自分がなぜ現代に戻されたのか
全部、分かったような気がしていた。
(出会うべくして、出会い
起こるべくして、起こる・・・
ってことなのかもね・・・)
甘いものが苦手な家康のケーキも
譲ってもらい、二個目のケーキも
幸せそうに頬張る桜奈。
それを、嬉しそうに眺める家康。
微笑ましい二人を見守る両親。
一人一人の顔を目に焼き付けるかのように
順番に見つめるながら、穏やかに微笑む栞。
(みんな、幸せに生きていってね。
私ももっと幸せに生きてくよ・・・)
ワームホールか開く時間は
刻一刻と迫っていた。
夕食を終え、それぞれの自室に戻る途中
アミューズメントコーナーが目に止まった栞。
『そうだ!ねぇ、最後にプリクラ撮りたい!』
と、言い出した。
『プリクラ?いいね!撮ろう撮ろう!
家康さんも行こう!』とはしゃぎながら
自然と家康の手を取り引っ張る桜奈。
『///あっ、うん///』
急に手を繋いできたことに
一瞬、ドキッとする家康。