第26章 〜番外編その3〜
突然、よくわからない事を言い出した
家康に、どうしたのだろう?と不思議そうな
顔をする桜奈。
そんな桜奈に気づき
気を取り直し、『なんでもないよ』
とニコッと微笑み返したが、やはり気になった。
(よく分からないけど、桜奈と
重なって見えたのは前世の桜奈とか?
いや、目の錯覚だよな。
でも、どっちにしても、なんか幸せそうに
笑ってたな・・・早逝だったって
栞さんは言ってたけど、でも
きっと、幸せだったんだろうな・・・)
と言う家康の心の呟きに、突然
『はい、私は幸せでした』と
頭の中に直接、語りかけてくるように
声が聞こえた気がした。
驚きキョロキョロする家康が、桜奈を
見ると、桜奈だけど桜奈ではない
もう一人の桜奈が、ふわりと微笑んで
そう返事をしたように思えた。
家康の中から、何かが
ぶぁっーと込み上げてくる。
ずっと心の奥底にあった、つかえが
取れたような・・・
欲しかった答えを貰えたような・・・
幻の桜奈からの、その言葉に
心の底から安堵と、嬉しさが湧き上がる。
自分の意識とは関係なく
勝手に涙が零れ落ちそうになった。
(そうか、幸せでいてくれたんだ・・)
そう思ったのは、どちらの家康からの
思いかは分からない。