第26章 〜番外編その3〜
清水寺や紅葉を見に永観堂も
観光して回った。
どこも風情があって美しく
同時に、その景観の中に同化する様に
懐かしいような気持ちも湧き上がる。
息を呑み、感嘆の表情で紅葉を見上げる
桜奈を横目で見つめる家康だったが
あの夏祭りの日、巫女舞を踊る桜奈に
感じた時と、似た感覚になる。
桜奈の輪郭に重なるように
もう一人の桜奈が見える。
目を擦り、見直すと
家康の方を振り向いた桜奈が
笑顔で何かを言った。
『家康様、今年も綺麗に色づきましたね。
家康様が下さった紅葉に命を救われ
その紅葉が、家康様と私を繋いでくれました。
私には、紅葉が運命の赤い糸だった
気がしておりますよ』
にっこりと幸せそうに微笑む
もう一人の桜奈の背景は
どこかの庭園のように見えた。
(えっ、なにこれ?
でも、この景色知ってる・・・)
ぼっーと桜奈を見つめる家康に
キョトンとする桜奈。
『紅葉、綺麗ですね!』と言ったが
自分を凝視したまま、固まっているように
見えた。
家康の顔近くで、手を振る桜奈は
『家康さん?大丈夫?』と声をかけた。
ハッとし、我に返る家康。
『う、うん。大丈夫。桜奈さっき
なんか言った?』
『えっ、紅葉、綺麗ですねって言いました』
『だよね・・・紅葉が運命の赤い糸?って
なんだろ?』
考えこむように、口元に握り拳を添えて
呟く家康。