第26章 〜番外編その3〜
コンコンとドアがノックされた。
『桜奈?どうぞ』と、着物をチクチクと
縫う手は休めずに答える栞。
『入るねー』と桜奈がお茶と
自分の裁縫道具を持って入ってきた。
『お疲れ様!お茶持ってきたよー。
ちょっと休憩したら?』と机の上に置くと
『そうだね、ちょっと休憩しようかな』と
肩をトントンしながら、たちあがると机の
ところまで行き椅子に腰掛けた。
お茶を飲み始めた、栞と入れ替わるように
仕立て途中の自分の着物に興味津々の桜奈は
『凄いね、なんか形になってる!
ただ、くるくる巻かれ生地だったのに!』と
目を輝かせて、感心した。
『やっぱり、その色いいわよね。
綺麗な薄紫で、品があるのになんか可愛いし。
京都旅行で、一緒に着物きて観光
できるの楽しみだわ』と言いながら
お茶をすすった。
『あっ、そうだ』と栞に聞きたいことを
思い出した桜奈。
反物選びの時に買った、辛子色の生地に
紅葉の刺繍を入れて、巾着袋を作る
ことにした。
小さ目の巾着にし、懐に入れて持ち歩いても
邪魔にはならない大きさにする予定で
つげ櫛の細工からヒントを得た
紅葉の刺繍にチャレンジ中。
『ここの部分は、こっちから通すの?』
と、自分の刺繍途中のものを見せて
『ああ、うんそう。もうちょっとこっちに
寄せても大丈夫よ。お裁縫苦手って言って
たわりに、なかなか上手じゃない?』
『えへへ、そうかな?プロに褒められると
嬉しいな!じゃ、この部分のやり方は
分かったから、もうひと頑張りしてくるね!』