第26章 〜番外編その3〜
『ああ、そうね。本物の家康も
この色を好んで着てるわよ
辛子色だね。食べ物も辛子たっぷりで
着るものもって、どんだけよね』と
クスクスする栞。
『へぇ、そうなんだ。この色が好きなんだ』
(家康さんは、何色が好きなんだろう?)
と、すぐに現代の家康のことを考えて
しまっていたが
『あっ、そうだ!ねぇ、桜奈
櫛を受け取った代わりに、あっちの家康に
なんか作ってあげてよ。なんでもいいから』
(きっと、喜ぶ!写真も持って行って
見せたら、泣いちゃうかもね、ふふふ)
『あんまり、お裁縫得意じゃないよ、私。
下手くそなやつもらっても、嬉しくないん
じゃない?』と心配する桜奈だったが
『ううん、上手、下手は関係ないの
桜奈が作ってくれることに
意味があるから、ね?それに、ここに
お裁縫のプロがいるんだから、どんと
任せなさいって。ちゃんと、教えてあげるから』
『う・・ん、お姉ちゃんが教えてくれるなら
じゃぁ・・・』
『はい!じゃ決まりね!色はどれにする?』
『じゃ、これで。この色が好きなんでしょ?』
『うん、いいと思う』
と、その辛子色の端切れを買うことにした。
自信はなかったが、栞も教えてくれると
言うし、何を作ろうかとワクワクした
気持ちに変わって行く。
何より、あんな素敵なつげ櫛をもらった
のだから、お礼として喜んでもらえたらと
そう思った。