第26章 〜番外編その3〜
これ以上、関わればまた桜奈を
傷つけるかも知れない、そう思うと
今は、直接会わない方がいいような
気がして、思わずそう口から出て
しまったのだ。
切ない笑みを浮かべながら、そう言伝を
たのむ家康に
今度は『えっ?』と言う顔になる上杉家一同。
(自分で、報告しないの?)と皆、思った。
(まだ、一週間も経ってないから
会いにくいのは、お互い様か・・・)
と思いながら
『あっ・・・そう・・なの。分かった。
桜奈には、伝えておくけど・・・』
と、鷹介は戸惑いながら、そう答えたが
栞が、横から口を挟んだ。
『自分で報告しなよ。
けじめがついたから、迎えにきたって
家康君の口から言ってあげて。たった5日間で
失恋の痛みが消えるわけないでしょ!
桜奈は、今でも辛そうにしながら
必死に忘れよう、前を向こうってしてるけど
このまま、忘れ去られて、家康君は
後悔しないの?』
語気を強め、納得できないと言う顔を
しながらそう訴える栞。
栞にそう言われ、ハッとし栞をみる家康。
そんな栞を宥めるように千里は
『栞、ちょっと落ち着つこう・・・』
と、栞の肩をポンポンと叩くと
『家康君、私もその方がいいと思う。
あの子がどう判断するかは分からないけど。
家康君もあの子の古風な
恋愛観は、うちに来たばかりの頃
聞いたから、知ってるでしょ?
慎重過ぎて、奥手と思ってたんだけど
そうじゃなくて、心に決めた人が
いたんだなと、栞の話を聞いて
思ったの。
あの子は無意識でも心の奥底には
ずっと前からもう心に決めた人がいて
だからこれまで誰も恋の対照に
なんてならなかったのだと、そんな気がしたの。
でも、家康君が来てくれてからのあの子は
本当に毎日楽しそうで、キラキラしてた。
もし、桜奈の心の中に決まった
人がいて、もし、それが家康君なら
私は、嬉しいし、大賛成よ。
だから、正直な気持ちをあの子に
直接、伝えてあげてくれないかな?』
桜奈に似た笑顔で、穏やかに微笑む千里。