第26章 〜番外編その3〜
『いいの、いいの。気の済むまで
泣いていいんだよ。その涙はね
桜奈の行き場の無くなった
家康君への想いでできてるの。
だから、溢れるまま、外に出してあげれば
いいよ。』
『お・・姉・・ちゃん・・
ダメだった・よ・・・
わ・・たし・・
桜奈・・さん・・に・なれな・・かった・
やっ・・ぱり、違った・・
わ・・たし・・じゃ・・なかった・・
運・・命・・の人じゃ・な・・かった・・
うわぁぁー』
しゃくりあげながら、やっと言葉を発する
桜奈。
詩織の腕をぎゅーっと掴み
やるせない思いを爆発させた。
桜奈をしっかりと抱きしめながら
『あなたは、桜奈さんよ。
お姉ちゃんが保証する。
こんなにも、家康を好きになる人なんて
桜奈さんしかいないもの。
あっちの家康は、きっと喜ぶよ。
また、桜奈に恋してもらえた。
そう言って、喜ぶよ・・・
家康の代わりに、お礼を言うわ。
桜奈、また出会ってくれて
家康を好きになってくれて、ありがとうね』
一緒に涙ぐみながら、桜奈の
背中をさすりながら、家康ならきっと
そう言うに違いないと思った。
肩を震わし、咽び泣く桜奈。
暫く、その状態が続いた。
気の済むまで、涙が枯れるまで
泣いてもいいよと、心でそう思いながら
桜奈に寄り添う栞。
少し落ち着きを取り戻した桜奈に
『前にも話したけど、向こうの家康はね
本当に、桜奈さんを想って
桜奈さんの為だけに
生きてるみたいでね・・・。
あっ!そうだ。ちょっと待ってて。』
急に思いついたように、桜奈を残し
何処かへ行った栞だったが、すぐに戻ってきて
『はい、これ』と紅葉の細工の入ったつげ櫛を
桜奈に手渡した。