第26章 〜番外編その3〜
『じゃ、頂きまーす』とショートケーキを
食べ始めた桜奈。
『うーん、やっぱり美味しい!!』と
パクパク美味しそうに食べる桜奈を
目の前の席で、頬杖をついてニコニコと
眺める栞。(美味しそうに食べるねー可愛い!)
『お姉ちゃんも一口食べる?』と聞かれ
うんうんと頷き、あーんと口を開けた。
一口もらって、モグモグする栞に
『美味しい?』と桜奈が尋ねた
『うん、すっごく美味しい』
とニコニコする栞が、幼い頃にみた千里と
重なった。
それをきっかけに、桜奈は、
ケーキバイキングに家康と行った日を
思い出した。
(そう言えば、ケーキバイキングに
行った時、どうしてスイーツ好きになった
のかとか、お姉ちゃんの話をしたっけ・・)
もう、この家に家康はおらず
この先も、関わる事がなくなったことを
また思い出しながら、ケーキを食べる桜奈。
心なしか、ケーキがしょっぱい気がした。
あの時のケーキの方が何倍も美味しく
思えてくる。もう、一緒に行くことは
二度とないけれど・・・。
すると栞が突然
『桜奈!大丈夫?』と
驚いた顔をしながら尋ねてきた。
『えっ?』と栞を見る桜奈だったが
視界がやけにボヤけてみえ、テーブルには
ポタポタと滴が落ちていく。
(えっ?私泣いてるの?)
自分の頬に手をやると、確かに涙で濡れていた。
『あれ?おかしいな、なんで泣いてんのかな』
あたふたしながら、涙を拭う桜奈だったが
一度、崩壊した涙腺は、涙を止める術を
忘れてしまったかのように、ポロポロと涙は
後から後から、勝手に溢れてくる。
『いやだ、困ったな、どうしよう!
お姉ちゃん、涙が止まってくれない・・』
何度も拭いながら
『あはは、やだなぁ、もう』と
どうしようもないと、自分を笑ったが
すぐに眉をひそめ、苦悶の表情になって行く。
(泣いたらダメなのに・・心配させちゃうのに
お願いだから、止まってよ!)
居た堪れずに、桜奈の側にいき
ぎゅっと抱きしめる栞。