第26章 〜番外編その3〜
婚約者がいるとかで
はっ?ってなったわよ。
前世の家を守ると言う約束への拘りが
今生でも暴走したままなのか
それとも、女好きと噂されたツケなのかは
知らないけど、私の可愛い桜奈に
(そして、桜奈さんに)こんな
顔をさせるなんて。
おのれ〜!許さん!!
桜奈ファンクラブから
永久追放してやる!!
家康のバカタレーーー!!
家康の引越しを終えて
ケーキを買い帰宅した桜奈は
『ただいまー!』と元気よく
入ってきた。
『お帰りなさい』『お帰りー』と
千里と栞が出迎えた。
『ただいま。』とニコッとする桜奈
だったが、明らかに泣いた跡が見えた。
『お土産買ってきたよー!
ケーキだよ!あとでみんなで食べよう!
私、着替えてくるね!』
ケーキを千里に預け、手を洗って自室へと
忙しなく戻る桜奈。
『鷹介さん、お疲れ様。引越しは無事
終わった?』
『うん、終わったよ。』
『桜奈は大丈夫だった?』と
尋ねる千里に
残念そうに無言で首を横に振る鷹介。
『そう・・・でも、仕方ないものね。
暫くは、そっとしておくしかないわね』
(家康、あんたほんとにいいの?
桜奈さんを手放して、ほんとにいいの?)
戦国時代の家康に、問いかけるように
ただただ残念な気持ちにガッカリする栞。
現代の家康も桜奈も
自分の知っている家康と桜奈さんとは
違うのだと言うことは、百も承知だった。
でも、想いを重ねてきたものが
魂に刻まれているのなら、戦国時代の二人からは
今の状況は、到底信じられなかった。
深く固く結ばれていたはずの二人に
来世こそはと請い願った二人に
別れの選択肢など、あってたまるか!
栞は、残念な気持ちと共に
納得できない、理不尽さを感じ
無意識に唇を噛みしめていた。