第25章 〜番外編その2〜
どうせ同じ舞台に立てる訳ではない
のに、政宗に好きな人がいたとして
何の関係があると言うのだろう。
(私の、この気持ちは政宗には
きっと、気持ち悪くて、迷惑なもの)
相変わらず、自分の政宗への想いを
異質だと感じる愛花。
一緒にいれば否応なく膨れ上がる
自分の気持ちを、押さえ込み
近所の年上の幼馴染としての立場を
堅持し、奥底へと押しやる日々。
年上の幼馴染の立場さえ、失わないなら
もう、それで十分。
それなら、政宗や、政宗の両親とも
変わらない関係性を長く維持していけるはず
その方がいいのだ、そう思うことで
自分の気持ちと向き合う事を無意識に
避けていただけだと思い知る日がきた。
本社での会議のあと、散々誘われてながらも
のらりくらりと、断り続けてきた政宗の
部屋に行く事になっていた。
システムキッチンを見に来てよと
言われていたが、二人きりになった自分が
気持ちを隠しきれる自信がなくて
ずっと避けていた。
自分ですら気持ち悪いと思うこの感情を
政宗に知られてしまったら、もう二度と
元の関係には戻れない気がして
怖くてたまらなかったのだ。
だが、政宗の父から政宗にお見合いの
話があり、しかも、自分にその後押しを
頼むと言われてしまった。
政宗にどう言えばいいのだろう。
そうだ、政宗は社長の一人息子で
会社を守っていかねばならない立場。
どんなに、仲良くても、元々の立場が違う。
やっぱり、私の判断は正しかった。
近所の年上の幼馴染が、丁度いい。
(丁度いいはずなのに、なんでこんなに
苦しくなるかなぁ、思った以上に堪えるわ。
バカだな。分かってたはずなのに、だから必死に
見ないふりしてきたのに、ほんと情けない・・・)
政宗の部屋へと向かう愛花の足取りは
酷く重く感じられ、時折止まってしまう。
一歩、また一歩と進む先にあるのは
陽の目を見ることが許されないまま
永遠に葬らねばならい
この恋の最後通告の場なのだ。