第25章 〜番外編その2〜
紙袋を受けとった姿勢のまま
一体なんだったのかと
ポカンとする愛花。
『まったく、なんだったの?』
(何?ライバル宣言?叱咤激励?ん?)
けれど、久しぶりに政宗らしい
台詞を聞いた気がして、クスッとする愛花。
紙袋の中身を覗くと、四角い
箱が入っていた。
(なんだろう?まっいっか。家帰ったら
見てみよう!)
自宅に戻り、引越しの荷物を終え
スッキリした、自室で政宗がくれた
箱を開けると
『えっ!』と驚く愛花。
箱の中身は、愛花のパティシエの原動力に
なった、あの桜のケーキだった。
箱の下には、メモが添えてあり
『頑張れ!』とだけ政宗の字で書かれてあった。
『ふふふ、凄いな政宗。ほんと、天才かも』
自分の後をちょこちょこ追いかけて
来ていた子が、才能では自分をあっさりと
追い抜いて行く。
悔しいとか、負けるもんかとか
そんな感覚ではなかった。
尊敬と親心が混じったような複雑な
思いの方が強かった。
『置いてけぼりを食うのは、私の方かも』
そう思うと、寂しさが湧いた。
ずっと一緒に歩いてきた道。
当たり前の様に隣にいた、弟のような幼馴染。
だが、抱きしめられた力強さに
とっくに男の子ではなくなっていたのだと
改めて気づかされた。
政宗の隣にいるのは、自分でなくなる日が
くるのか、ただ何となく想像しただけだった。
政宗の隣で、幸せそうに笑う誰かの姿が
ふいに浮かぶ。
ズキッ・・・『えっ?何これ?』
胸に走る、小さな痛み。
愛花は、気づいてしまったのだ。
これから先、政宗と一緒にいることも
政宗の家で、政宗や政宗の両親から
見守られて、与えてられることが
当たり前になっていた、あの温かな居場所が
なくなる日がくるのだと悟ったのだ。