第25章 〜番外編その2〜
『ま、政宗?』
肩にコテンと頭をのせて
抱きしめたまま動かない政宗に
愛花は戸惑っていた。
いつの間にか、身体の作りだけは
男の子ではなく、男の人になっていて
その力強さに、不覚にもドキドキして
しまった。
『ちょ、ちょっと、落ちつこ!』
そう言って、自分から政宗を引き剥がすと
『そんなに、急いで大人にならなくたって
いいんだよ。政宗の実力ならあっという間に
私を追い抜いて行くはずだから
ゆっくり、料理の道を極めていけば
いいよ』と、全く以って、頓珍漢な
アドバイスをする愛花に
『はっー』と盛大なため息をつく政宗は
『全っっっ然、分かってないし!
まっ、愛ちゃんだもんな、しぁーないや。』
と、年下の癖に愛花の頭をポンポンと撫でた。
『ちょっ、なに!生意気ね。政宗のくせに!』
よく分からないが、話が通じていないことを
小馬鹿にされ、諭された気分になった
愛花は、ムッとしたが
『あははっ、いや、ずっとそのままでいてよ。
俺が追いつくまで、よそ見しないで
ずっと、プロになることだけ考えて!』
『んなのっ、言われなくてもそうするわよ!
政宗になんか、負けてられないいんだから!
あんたも、しっかり修行しなさいよ』
『大丈夫、俺は、ほら天才肌って言うの?
余裕、余裕。愛ちゃんもせいぜい追い抜かれ
ないように仕事頑張ってよ!
これは、俺からの餞別な。必ず、追いつくから
覚悟して待っとけよ。じゃあな!』
(待ってろよ!俺だけを見てもらうからな!)
そういって、紙袋を愛花に渡すと
政宗は自宅へと戻っていった。