第25章 〜番外編その2〜
政宗の母に促されるまま、リビングの
ソファーに腰掛けた愛花。
キッキンからは、甘い香りが漂っていた。
微かにチョコレートの香りもしていたが
政宗が、蝋燭に火をつけて持ってきたのは
イチゴのホールケーキだった。
『ちょっと、誕生日には早いけど
良かったら、食ってって。』
恥ずかしそうに、ボソボソ話す政宗。
『うわーっ!これ、政宗が一人で焼いたの?
デコレーションも?』驚く愛花に
コクっと頷く政宗。
『さすがだね!私よりセンスあるよ
へぇ、すごいなぁー』感動しきりで
穴が空くほど細かに観察する愛花に
『ほら、愛ちゃん、蝋燭消して』と政宗の母に
促され、ふぅっと一気に蝋燭を吹き消すと
政宗の母と、政宗は
『愛ちゃん、誕生日おめでとう』と拍手した。
『ありがとうございます!すっごく嬉しい!
政宗!ありがとうね』と、政宗に満面の笑みで
感謝を伝えた。
直視できない政宗は、『あぁ』とふぃっと
目をそらし答えた。
(照れちゃって、可愛いやつ!)
口に入れた瞬間に、溶けていきそうな
フワフワなスポンジと、甘すぎない生クリームに
甘酸っぱい苺。
今まで食べた、どのショートケーキより
美味しいと思った。嬉しい気持ちと
もう、こんな風にわいわいと
この場所で過ごせなくなるのかと思う寂さで
目が潤んだ。
『あーっ、美味しい!美味しいよ政宗!
ありがとうね!私も仕事頑張るから
あんたも、充実した高校生活送んなさいよ!
料理もね!私も、政宗に負ける訳には
行かないから、頑張るから!』
涙目で、嬉しそうに政宗を激励する愛花。