第25章 〜番外編その2〜
政宗が初めてプロポーズをしてから
10年が過ぎ
政宗は、中学3年生。
愛花は、20歳。(来年3月で21歳)
短大を卒業し
今は、製菓の専門学校に通い
パティシエの技術を学んでいた。
来年の4月からは、社会人になる。
その一方で政宗と愛花だけの
料理教室は続けていて、主に
製菓の研究を重ねつつ
専門学校での復習もかねて
菓子作りに励んでいた。
二人とも、料理の腕前は上達していて
政宗の母が教えることなど
もうないのではないかと思うくらい
料理に向き合う姿勢は、真剣そのものだった。
そして政宗も高校受験が控えていた。
政宗の母が望んだように
伊達男の片鱗を見せ始めいた政宗。
中学3年ながら、身長は既に175センチは
あり、まだまだ伸び盛り。
剣道部の主将で、試合の応援に行った時も
その袴姿での所作や、真剣勝負の中
気迫と切れ味するどく、竹刀を振るう
颯爽とした姿は、確かにカッコ良かった。
いつの間にか男らしく成長したと
弟の成長を喜ぶ姉の気分と
時折見せる大人っぽい表情や仕草に
うっかりドキッとさせられることも
多くなっていた。
同世代の女子からは、キャーキャー
言われ、モテるのは間違いなかったが
その割には、誰に告白されても
特定の彼女ができた話は
政宗の母からも聞いた事はなかった。
受験勉強の真っ只中でも
愛花との料理教室は続けていた。
政宗にとっては、ストレス解消であり
息抜きの時間でもあり
愛花と過ごせる貴重な時間でもあった。
クリスマスが近づき、今年は
シュトーレンに挑戦していた。
お互いに、自分の作業に没頭しているときは
気にもならないのだが、この頃の政宗は
愛花と目が合うと、ふぃっと目を逸らしたり
口数が少なくなったり、と思春期の男の子
らしいと言えば、そうなのだが
(来年からは、私も社会人だし
仕事が始まったら
ここにも通えなくなるよね・・・)
そう思うと、政宗のよそよそしい態度は
愛花には余計に寂しく感じられるのだった。