第24章 〜番外編その1 〜
それから、二人で砂浜へと向かった。
子供連れの海水浴客達の、だいたいは
帰り支度を始めていて、シートを畳んだり
パラソルを閉じたり、忙しく
片付けをする人が目についた。
そのせいか波打ち際は、思ったよりも
人口密度は高くはなくスムーズに
歩くことができた。
懐かしむようにキョロキョロする詩織。
『いいなー、私も水着持ってくればよかった』と
若いカップルが、イチャイチャしながら
はしゃぐ姿をジーっと眺め
羨ましいそうに呟いた。
『じゃ、来年は水着を持ってくればいいだろ?』
そう、シレッと話す信長。
えっ?と一瞬驚く詩織だったが
『先生、私、来年は一応受験生ですよ』
『1日くらい、平気だろ?それとも
目も当てられない、余裕のない成績なのか?
それなら、俺が家庭教師でもしてやろうか?』
冗談とも本気ともつかない信長だったが
『そういえば、志望大学の目星は
ついてるのか?』
『うーん、漠然と?なんとなく?』
自信無さげに首を傾げる詩織に
『まぁ、焦ることでもないだろ。
ゆっくり見極めていけばいいさ
まだ、若いからな』
若いと言う言葉に、大人っぽさ設定を
すっかり失念していた自分にはたと
気づいた詩織。
(ああ、やっぱり先生から見たら
私は、お子ちゃまみたいなもんだよねー)
と、さっきまで胸いっぱいだった
わくわくする気持ちが、シュッーと
萎んで行き、俯き足が止まる。
『ん?どうした』視界から消えた
詩織を再び捉えようと振り返る信長。
『や、やっぱり、私じゃ先生からみたら
まるで子供ですよね。
れ、れ、恋愛対象としては
見てはもらえないですよね?』
信長の顔を見れないまま
訴える詩織。
(な、な、何言ってのよ私。
いい雰囲気が台無しじゃないー
私の馬鹿!!)
俯き、ギュッと目を瞑り
居た堪れない詩織。