第24章 〜番外編その1 〜
マスターに
『また、ぜひお二人でいらして下さい』と
見送られ、店を後にした信長と詩織。
車を発進させてすぐに
『ちょっと付き合ってもらいたい場所が
あるんだが、いいか?』と詩織に尋ねた。
『はい、大丈夫です』と答えたが
『どこに行くんですか?』と聞き返したが
ニヤッとしながら
『懐かしい場所』と答える信長。
詩織は、首を傾げ
信長にとっての懐かしい場所なのだろうと
あまり深くは考えず
(どこに行くんだろう?)とそのまま
信長の言葉を受け入れることにした。
明日から9月だとはいえ
まだ夏真っ盛りのような空と日差し。
フロントガラス越しに広がる
青々とした空と、写真でみるような
大きな入道雲。
気づけば、高架を走る車の窓の
向こうには、海が見えた。
『うわー、海が見える!』
テンションが上がる詩織をチラッとみて
『海は、平気なのか?』と尋ねた。
『はい、好きですよ』
(あれ以来、心配させるから来たことは
なかったけど、私の、1番の思い出の場所)
(大丈夫そうだな、トラウマになってないとは
言ってたが・・・)
『海みて、気分が悪いとかはないか?』
『ん?』(もしかして、心配してる?)
不思議そうな顔して、信長をみた詩織だったが
『日曜日に、桜奈が先生と徳永さんと
海行ったって聞いて、いいなぁって
思ったんですよね。
桜奈も私に付き合って、泳ぎに行く時は
いつもプールだったから・・
久々の海はやっぱりきれいだったって
言ってましたよ。
私も、怖かった思い出より
先生に助けてもらった印象の方が
ずっと強かったけど、家族が心配するから
海行きたいって言えなくて・・・
あの日以来、行ったことないんですよね。
あっ、今度、一緒にいきませんか?海!』
『そうか、生憎だが、今度は無理だな・・』
『あっ、そうですよね。忙しいですもんね・・』
と、しゅんとする詩織に
『今度じゃなく、今、向かってるからな』と
ハンドルを切った。