第24章 〜番外編その1 〜
目の前に置かれ、より一層
香りが食欲を刺激し
ぐぅっとなりかけた瞬間に
パッとお腹を押さえて、これ以上
鳴らしてなるものか!と力を入れる詩織。
『ふふふっ』とまだ笑いが続く信長だったが
『じゃ、食おうか。いただきます』と
手を合わせた。
詩織も釣られるように『いただきます』と
言って、一口食べた。
びっくりするほど美味しくて
『美味しい!』と言う言葉が、勝手に口から
飛び出した。
『だろ?』と当然だと言う顔しながら
満足そうに、ナポリタンを頬張る信長の
所作に見惚れる詩織。
(うわっ、先生の食べ方ってすごく
きれいだ・・・)
見られていると感じた信長は
『ん?どうした?』と詩織を見ると
『いえ、なんでも///』と、慌ててホォークに
パスタを絡めたせいか、ぴっと詩織の口元に
ケチャップが飛んでしまった。
見惚れていたことを悟られまいと必死の
詩織は気付いていなかったが
『詩織』と呼ばれ、えっ?驚いて顔上げると
クスっとしながら、スッと信長の手が伸びて
『ついてる』と口元に飛んだ
ケチャップをさり気なく拭った。
(///な、な、なんなのー!///)
また、かぁっと赤くなる詩織の
反応を楽しんでるようにすら見える信長。
(///こわいー、これが大人の余裕って
やつなのか?!そうなのか?)
信長の言動に振り回されて続け
いっぱいいっぱいになる詩織。
さっきまで、凄く美味しかったナポリタンの
味は、もはや、よく分からなくなっていた。
発作のように、ドキドキと時折
急激に高鳴る心臓は、自分の言うことなど
きいてはくれない。
嬉しいような、楽しいような
それ以上に恥ずかしいような
色んな気持ちがぐるぐるする中で
やっと食事を終えたのだった。