第24章 〜番外編その1 〜
『マスター、こんにちは。
コーヒー頂きに来ました。』
マスターと目が合い、ペコッと頭を下げる詩織。
『いつも、ご贔屓にして頂いて
ありがとうございます。
空いてる席に、ご自由にどうぞ』
ニコニコしながら、対応するマスターは
とても穏やかで、優しそうな人に見えた。
信長に促され、席についた詩織。
窓の外にふと目をやると、綺麗に手入れされた
芝生と、毛足の短い色とりどりの小花の
コントラストが美しく、また、ぱぁっーと
明るい顔で庭に釘付けになり見入る詩織。
サッーと風が吹くと、微かに揺れる
花々を眺めていると、室内にいる自分にまで
心地良い風が吹いたような気分に
させてくれた。
『庭は、気に入って頂けましたか?』
お冷やとおしぼりを持ってきたマスターが
庭に夢中の詩織に話かけた。
振り向き、マスターを見て
満面の笑みで『はい!とても素敵ですね』と
答えた。
初めて見る、詩織の屈託のない
満面の笑みに、不意をつかれたのは
信長の方だった。
(ほっー、こんな顔もするのか)
チラッとの信長をみて、反応を見るマスター。
それから、詩織をみて
お冷やをおきながら
『先生、いつもお一人でいらっしゃるから
お連れ様連れは、初めてで私も驚きました。
この通り、閑古鳥が
鳴いてるような店ですが、どうぞ
ごゆっくりして行って下さい』
店の空気と同じように、包み込まれ
ホッとするようなマスターの優しい笑みに
癒される詩織は
優しい気持ちが胸いっぱいに広がって
行くような気分になる。
『はい、ありがとうございます』
と、またニコニコしながら答える詩織。
入店してからは、再会した直後とも
さっきまでの車内での
雰囲気とはガラリと変わり
穏やかで、飾らない笑顔を見せる詩織。
素直で明るい17歳の少女の素の詩織の姿が
信長には眩しく、キラキラして見えた。