第24章 〜番外編その1 〜
信長は信長で忙しく、夜勤明けの
今日しか、時間が取れなかった。
ジャケットの返却など本当は
いつでも良かった。
病院で再会し、詩織に自分はヒーロー
なんかじゃないと、勘違いだから
早く目を覚ました方がいいだろうと
親切心で、わざと煽り不純な大人のふりをした。
だが、返ってきた反応があまりに意外だった。
冷静沈着を通り越し、人を寄せ付けない
冷たい感じで、時々厳しい時もある。
しかし、その内面はとても優しく親身に
なって治療に当たる姿勢は
患者さんからの信頼は厚く
すこぶる評判のいい、次期医院長。
その高貴で近寄りがたい感じと
端正な顔立ちと、スマートな対応で
同僚ナース達からは、氷の王子と
噂され、高嶺の花のような存在の信長。
そんな状況の職場で、信長に面と向かって
噛みつくような人間はだれもいなかった。
だからこそ、詩織を面白いと思った。
(俺を怖がらない奴だから、珍しかった
んだろうな・・・)
待ち合わせ場所で、そんなことを
考えながら待っていると
詩織が階段を、降りてきた。
詩織を見つけ、ハッと一瞬息を飲む信長。
とても、高校生にはみえず
そのギャップに驚き
思わず見惚れてしまっていた。
『先生、お待たせしました。』
と、ニコッとする詩織に
『あっ、あぁ』と手で口元を隠しながら
答える信長。(雰囲気が全然違う。)
『?』と言う顔で、顔を覗き込むと
『どうしたんですか?あっ、夜勤明けで
疲れてますよね?すみません、夏休み中に
って私が言ったから、無理させちゃい
ましたよね。』と申し訳なさそうにする詩織。
(あー、やっぱり、疲れてるよね。
今日じゃない方がよかったかな・・・)
(なんだ?今日は、やけにしおらしいな・・)
『あっ、いや。大丈夫。夜勤明けなんて
慣れてるよ。じゃ、悪いが駐車場まで
少し歩くぞ』と言うと、ふぃっと身を翻し
歩き始める信長。
『あっ、はい。』と慌てて信長の後を
追いかける詩織。