第24章 〜番外編その1 〜
『今日も会うなんて、偶然ですね!
先生、ここのパンケーキ気に入った
んですか?』
『ああ、昨日初めて食ったら
美味かったから、また食べたくて。
午後の診察までの間に抜けてきたから
あんまり、時間はないけどな』
『そうなんですか、お忙しいですよね。
でも、わざわざ来て食べたくなるの
わかります!私達、ここの常連みたいな
もので、その流れでバイトも
させてもらってるんです。ねっ、しぃちゃん!』
と話を振る桜奈。
俯いたまま、コクッと頷くだけで
精一杯の詩織。
『悪かったな、そんなに俺に会うのが
嫌だったとは思ってなかった。
俺は、また会って話をしてみたくて
連絡先を渡したんだが、迷惑だったみたいだな。
ジャケットは、気にするな家康に渡して
もらえばいいし、これは回収させてもらうよ』
と、テーブルの上のメモに
手を伸ばすと、それより早く詩織は
メモを掴むと、手をテーブルの下に隠した。
あまりの素早さに呆気に取られる
桜奈だったが
『あ、あの、ちゃんと連絡して
ジャケット返します。
あ、会うのが、い、嫌とかじゃないです・・』
聞きとるのがやっとの、消え入りそうな
小さな声で、そう答える詩織は
また、真っ赤になった。
『だそうです、先生!』とクスクスする桜奈。
『そうか、じゃ、待つことにする』
そう言った信長の目元も微かに
赤くなっているように見えた桜奈。
その後は、信長と並んで座る詩織の
気ごちない動きとは対照的に、どこか
上機嫌の信長。
そんな二人をひたすらニコニコと
嬉しそうに眺める桜奈。
『なんか、面白い空気ね、あそこ』と
話す愛花に
『だな、でも悪くない雰囲気だ。
まさか、詩織が信長さんをねぇ・・・
世の中は、狭いわ』としみじみと
話す政宗だった。