第23章 〜鴛鴦の契り〜
すると、突然、栞が桜奈のほっぺたを
つまみ、びろーんと引っ張った。
『いひゃいよ、おれいひゃん、はにひへんほ!
(痛いよ、お姉ちゃん、何してんの!)』
パッと手を離した栞は
『ほら!夢なんかじゃないでしょ!』と
にんまりとした。
頬をさすりながら
『イタイ・・・そうだね。夢じゃない』と
ゆっくりと満面の笑みになる桜奈。
家康が引越してからの5日間、日に日に
憔悴していく桜奈を
そっと見守ってきた。
やっといつもの無邪気な笑顔に戻ったことを
千里は、心から安堵したのだった。
リビングに行くと
少し残念そうな影は見え隠れするものの
穏やかな笑みを浮かべ『お帰り』と鷹介。
『ただいま、パパ。あのね、私・・・』と
言いかけると、突然、動揺し始め
桜奈の言葉を遮るように
『い、い、言わなくていいよ。
分かってる、分かってるからー』と
両手で顔を覆い、メソメソしそうな
自分の顔を隠す鷹介。
『あらあら、ほんと、桜奈が
お嫁に行く時は、ハンカチじゃなくて
タオル持っていかなきゃ』と、呆れながらも
そんな鷹介を可愛いと思う千里は
揶揄い半分にそう言ったが
『嫁!!桜奈、もう、お嫁に行くの
いや、早すぎる、待って、行かないでー』と
また、メソメソする鷹介。
『パパ、可愛いねー、ねぇ、桜奈』
とクスクス笑う栞に
『うん、パパ、私がお嫁に行くのは
まだまだ先だから・・・それに、パパの
娘なのは、一生変わらないでしょ?
パパとママの娘で良かったよね
お姉ちゃん!』
『もちろん!!』と姉妹は、顔を見合わせ
満足そうに微笑み合う姿は
パパとママの娘に生まれてこれて
良かったと、そう物語っていた。